大道芸通信 第309号

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  恐 る べ し颱 風(たいふう) 情 報

先月十六日(土)に行われた深川江戸資料館主催(第九回)「江戸の物売りと大道芸」は、颱風情報に振り回されてさんざんであった。それでも颱風が来るのは午後からとの情報があったためだろうか、午前に開催した一回目は、百四、五十名はいたから一(ひと)安(あん)心(しん)した。しかし、 颱風の来る時間が迫った午後二時からの二回目公演は、散々であった。最大に見積もっても三桁には届かなかった。
 観客の多くが高齢者であるため、家族が心配して外出を控えさせたのだろう。これまでのワースト記録を更新したようである。
 ところが、颱風の到来は予定より遅れ、公演中は雨も降らなかった。これなら心配せずとも大丈夫だったと、天気
予報を恨んだ。その分、集まった観客はこれまで以上に熱心であった。アンケートを取ったので、結果を紹介する。
総数は二十四通。男女比は、男性七通に対し、女性は十六通あった。一通は男女不明者である。
 年齢構成以下については個別に紹介する。

○年齢構成
 一〇代     一名
 二〇代     〇名
 三〇代     二名
 四〇代     二名
五〇代     六名
 六〇代     七名
 七〇代     二名
 八〇代     三名
 不明      一名

○観客の居住地は
 東京都    一五名
 千葉県     三名
 横浜市     一名
 埼玉県     一名
 茨城県     一名
 京都市     一名
 広島県     一名
 不明      一名

○公演を何で知ったか
 ポスター・ちらし六名
 知人・友人   四名
 江東区報    三名
 ホームページ  二名
 出演者     一名
 その他     七名

○公演内容は
 良かった    二一名
 普通      二名
 良くなかった   〇名
 無回答     一名

○印象に残った演目
 ①女霊媒師  一五名
 ②南京玉すだれ一四名
 ③阿呆陀羅経  九名
 ④ところてん売り七名
 ④よかよか飴売り七名
 ⑥虚無僧流し  六名
 ⑥地獄極楽   六名
 ⑥物産飴売り  六名

○今後同じ催しがあれば
 ぜひ来たい  一八名
 わからない 六名
 来ない 〇名

○意見感想
・虚無僧流し、わいわい天王、南京玉すだれ=楽器を使った演目をもっと。素晴らしい活動に感激
・女霊媒師の神田鶴和さんの内容が、今ままで実施していたものと、全く変っていなかったことが気になりました。大道芸は、少し、変化をつけたら面白いと思いました。
 他は、変化しておりましたが、女霊媒師のみが、霊を憑依した相手が美空ひばり(田中角栄はありませんでしたが)で前回と同じだったので、リピーターの方は、笑う場所が同じというのが、憑依した時点で分かってしまったのでは?
・素晴らしかったです。これからも続けて欲しい。
・楽しかったです。ありがとうございました。
・日頃目にする機会がないので楽しませていただきました。
・ちょうど勉強しているところで、とっても役に立ちました。(わいわい天王の)お
札の紙をもっと薄く。
・とても楽しかったです。
・力が入りすぎ。
・物売りの声が素晴らしかった。
・時間を長くして、説明解説を加えた方が良い。
・一ヶ月前にチラシを見て楽しみに来ました。どの方も声が素晴らしく来て良かったと思いました。始めと終わりのアナウンスは、もっとちゃきちゃきした感じが良かったように思う。

 観客からの意見感想は以上です。これ以外に、今後みたい希望演目として、太鼓持ちやきびだんご売り、飴細工がありました。飴細工は兎も角、外の二点は大道芸ではありません。またこれまでは出ていたバナナの叩き売りが今回はありませんでした。
 世間の人にとって、それほど和物大道芸は遠い存在になったのでしょうか。バナナの叩き売りをする場合も、買い方の説明をしなければわからなくなりました。このまま何もしなければ、あと数年で消えてしまうでしょう。
今隆盛を誇っている上方落語ですが、且つては絶滅危惧種だったのです。我が大道芸もそれを見習って、なんとしても復活させなければ。それが私たち伝承者の使命でもあります。皆様方もゼヒ! 
 参加者を募ります。

 ヴァイオリン演歌② 楽四季一生

〇神長瞭月(1888~1976)
  栃木県・塩谷出身、ヴ  ァイオリン演歌の祖

「松の声」を唄って神長瞭月は人気者になっていた。明治四十二年頃(明治四十年、四十三年説もあり)瞭月は「残月一声」という唄でヴァイオリンを伴奏楽器に使い始めた。活動写真で伴奏楽器に使われていたヴァイオリンを見て、小さくて軽く持ち運びに便利。その上人目を引き、受けるだろと思いついたのだ。もちろん初めは、演奏どころか調子も合わせられず、ただキコキコやるだけで「歯が浮く」だの「鋸の目立て」などと笑われた。
 しかし大衆の音楽的レベルは低く、ものめずらしさで大いに受けた。そしてヴァイオリン(当時はオリンと言った)を持つ者が増えていった。

  ♪作った唄
♪松の声 ♪残月一声 ♪スカラーソング ♪ハイカラ節 他

♪ハイカラ節
  (神長瞭月が女学生風俗を織り込んで作った唄)

 ゴールド眼鏡のハイカラは  都の西の目白台 女子大学の女学生  
 片手にバイロン  ゲーテの詩  口には唱える自然主義
 早稲田の稲穂がサーラサラ  魔風恋風そよそよと

(ひと言余計? 光田)
 一般に神永瞭月が作詞したとされる「松の声」一名「海老茶式部堕落の果て」について、『文芸倶楽部』(大正二年(1923)十一月号)が、大正二年当時の「流(は)行唄(やりうた)の作者」特集をし、「海老茶式部堕落の巻」に次の記事を載せている。

《流行歌の作者は前記の添田唖蝉坊お外に、神永瞭月、石川曲峯がある。神永瞭月は青年倶楽部といふものを組織して、矢張りおのれの作歌を印刷したものを売らしてゐる。(中略)
石川曲峯については聞く所が少ないため書く事が出来ぬが、(中略)松の声(一名海老茶式部堕落の巻)といふのが、この曲峯の傑作だといふ。 》 (『文芸倶楽部』)

 リアルタイムで書かれた資料が、一世を風靡していた神永瞭月を退け、殆ど無名であった石川曲峯としていることは、信頼できる。
またヴァイオリン演歌の始まりについては、最後のヴァイオリン演歌師と言われた故桜井敏雄師は常々明治四十三年と言っていた。大道芸に限らず伝説などは、十年やれば昔から、二十年やれば親の代からという人は結構多い。そこまで言わずとも殆ど長めに言う。最後の演歌師である桜井師が、四十年なり、四十二年なりといえば、誰でも信じる。しかし、彼とは何度かイベントでご一緒したことがあるが、四十三年以外の年号は一度も耳にしたことがない。
今回、改めて調べてみたが、古く言う資料は二次資料ばかりである上、新しく言われるようになったものが多い。よって光田は、明治四十三年説を信じる。

中山晋平・島村抱月・松井須磨子

〇松井須磨子(1886~1919)

 大正三年は、世界的に見ると第一次世界大戦が起こり、パナマ運河が開通した。 日本では宝塚少女歌劇団が初公演し、エスカレータが初めて登場して、赤レンガの東京駅が開業した。
 同年、劇作家島村抱月(1871~1918)と明治末から新劇のスターだった松井須磨子等によって芸術座が旗揚げされた。
 芸術座第三回公演「復活」という劇の中で唄う唄を、東京音楽学校(今の東京芸大)在学中から島村抱月の書生をしていた中山晋平が作曲する事になった。抱月の注文は「日本の民謡と西洋のメロディを一しょにしたような唄」だった。そして晋平が作った「カチューシャの唄」には民謡のお囃子からヒントを得た「ララ」という言葉が入っているのである。
 ♪カチューシャの唄

カチューシャ かわいや  別れのつらさ
せめて淡雪 とけぬ間に  神に願いを ララ かけましょうか

〇中山晋平(1887~1952)

「復活」の芝居も劇中歌「カチューシャの唄」も大ヒットし、松井須磨子が付けて
いた櫛(カチューシャ)も大流行した。公演は日本全国から台湾、朝鮮、満州そしてウラジオストックまで。公演回数四百四十四回。
 この「復活」及び「カチューシャの唄」の大成功により、芸術座は翌年(大正四年)四月の第五回公演で ツルゲネフ原作「その前夜」をやり、その主題歌「ゴンドラの唄」を再び中山晋平が作曲。

♪ ゴンドラの唄

いのち短し 恋せよ乙女 紅き唇 あせぬ間に
熱き血潮の  冷えぬ間に 明日の月日のないものを

 昭和二十七年十月、黒沢明監督の「生きる」という映画の公開。主題歌に「ゴンドラの唄」を使用。その年の十二月初め、恵比寿の映画館でこれを見て感動した晋平は、その翌日倒れ十二月末死去。六十五才

 大道芸の会会員募集 
「南京玉すだれ」や「がまの膏売り」など、日本庶民の伝統文化「大道芸」を一緒に覚えませんか。練習日は左記の通りです。
●第三〇六回目 十一月八日(水(すい))

●第三〇七回目 十二月十三日(水(すい))

●第三〇八回目 一月十日(水(すい))

時間・午後七時ー九時
場所・烏山区民センター 大広間(二階)

 また、歴史や時代背景を学び、或いは技術を向上させたい人のために、学習会や伝承会も行っています。
●日時 ・場所(随時)
 随時HP掲示板(ほーむぺーじけいじばん)等で通知

編集雑記
今、和物大道芸を取り巻く環境は大変厳しい。習得までの時間がかかる上、派手さもない。ジャグリングなら三歳の子供でも理解できるが、ストーリー中心の和物はある程度の年齢にならないと、なかなか理解できない。理解できても、面白いと思うかどうかは別である。それでもしぶとく続けているのは、何時の日か新しい大道芸を生み出す人が顕れることを期待しているからである。

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