大道芸通信 第318号

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『煕代勝覧』が載せる生業⑦

困ったときの『煕代勝覧』と云う訳ではないが、どうにもネタが浮かばんときの特効薬が『煕代勝覧』である。以前六回まで続けたから、今回は七回目である。号数で云えば、以前載せたのが第265号、年で云えば二〇一四年六月だから、四年前になる。「もうそんなに」というか「まだそのていどか」ということで年がわかる。
それは兎も角、これには振り売りや屋台見世に限らず様々な生業が描かれてある。ひとめでわかるもの、わからんもの色々あるが、全てについて解説したものは未だない。当時は当たり前であったものでも二百年も経つとわからんものだらけである。 取り敢えずわかるものだけ解説するが、そうでないものは「不知」として、絵だけ載せておくので、読者各位でご存じの方は、ご連絡、ご教示下さい。(右から左へ、上から下へ進める)
 これまで第265号へ載せたので詳細は省くが、元々婆さんであったが、元禄頃から若い娘に店番させるようになった。だからにやけた男が覗いている。
 ①屋台の茶店
 ②振り売り  商品名は不知
 ③巡礼
 ④振り売り(小間物?)
 ⑤牛車(上)石材(下)俵物
⑥自身番屋  場所。町の出入口である木戸脇へある。小屋の番をする者を番太とか番太郎と呼んだ。空き空間や前を利用して商売することが認められていた。この番小屋も日常品を売っている。
 ⑦不知(祝いのものを運んでいるのであろうか)
 ⑧後は野菜売り  手前で黒い包みを背負っているのは、前を歩く武士二人(この絵では省略)の荷物を持つ仲間か(ちゆうげん )も知れないが不明。
 ⑨屋台見世(桐屋)飴屋?
 ⑩鳥刺(とりさし)(餌(え)差(さし))   竿の先へ鳥もちをつけて鳥を捕まえることを生業にしている人のこと。猟場は寺社の境内など、木々の多い場所であった。捕まえた鳥は、飼い鳥や鷹狩用鷹の餌として売られた。
 ⑪不知
 ⑫煙管売り
 ⑬猿廻し(猿(さる)曳(びき))   猿(さる)飼(かい)とは異なる。猿飼は弾左衛門直轄で、頭として滝口長太夫と小川門太夫の二名がいた。職務は将軍家以下大名や武家などが持つ馬の祈祷をしていた。この内の門太夫が大正十四年刊行の『風俗研究』五十七号へ載せている(本紙の何号かに転載していると思う) 本紙第211号、第265号等にも詳細に書いたので、これ以上の重複は避ける。
 これに対し、猿廻し(猿曳き)は、街中で芸を見せ投げ銭放り銭を受けていた。
 ⑭不知    通常、一人が一荷(天秤棒の前後に二つある)で担ぐ荷物を二人で一つしか担いでいないので、相当重いか余程大切なものであろう。後の人が振り向いている上、重そうな顔をしていないから大切なものであると推察する。
 ⑮不知    ほおかむりしている男が覗き込んでいる籠の中は、ゴボウのように見えるが、よくわからない。⑧を野菜売りに決めたのは、「だいこ」と「ごんぼう」に振り分けてあるからである。振り声の響き加減で「だいこん」の「ん」を「ごぼう」へ分け与えてあるからである。
 ⑯不知   にぎり鮨の屋台という人もあるが、この絵巻の描かれた文化二年(1805)頃(後日紹介する駿河町付近を描いた勧(かん)化(げ)僧(そう)の供が担う箱に、「文化二 回向院」とある)に握り寿司屋台があったかどうか疑問がある。
 握り鮨の初めについて『嬉遊笑覧』に、「文化のはじめ頃深川六軒ぼりに松がすし出きて世上すしの風一変し」とあるのがそうだとされる。『守貞謾稿』は「江戸にても、或は重ね筥に納て之を肩し、或は御膳籠等を担ぎ売るもあり。初春には専ら、小はだの鮨を呼び売る。因曰、京坂にては方四寸許りの箱の押ずしのみ。(中略)江戸にても、原(もと)は京坂のごとく筥鮨。近年はこれを廃して握り鮨のみ」とある。近年とは、『守貞謾稿』の序に「天保八年(1837)以来見聞に随ひ」とある。また「古きことには専ら年号を記し、即今の事には、多く今世と書く」ともある。しかし、今世より古いが、年号表記するほどではない「近年」の範疇はわからない。
『守貞謾稿後集巻之一』が載せる「鮓」項に「江戸は何時頃よりか、押したる筥鮓廃し、握り鮓のみとなる。筥鮓の廃せしは五六十年以来漸くに廃すと也」とある。
『守貞謾稿』は、一度に書かれたのではなく長期に亘って書き継がれてある。また『後集巻之一』の最後「獣肉」の項に「皇国も」云々』と表現されている事から、明治(1868~)に入ってからも書き継がれていたのではなかろうかと推察する。そこから五六十年以前だと、文化文政時代頃になる。これは『嬉遊笑覧』が記す時期とも重なるから都合がいい。
 半面、松が鮓は高価な事で知られていた。「松ヶ鮓一分ぺろりと猫がくひ」の川柳が残るように、一人前一分(四分の一両=二三万円か?)もした上、同店の創業は文政十三年(1830)とされる。猫は回向院付近の岡場所の女を金猫銀猫と呼んでいた。気楽に屋台で食せるようになるのはもっと時代が下がる。

 大道芸の会会員募集 
「南京玉すだれ」や「がまの膏売り」など、日本庶民の伝統文化「大道芸」を一緒に覚えませんか。練習日は左記の通りです。
●第三一五回目 八月八日(水(すい))

●第三一六回目 九月  日(水(すい))

時間・午後七時ー九時
場所・烏山区民センター 大広間(二階)
◎江戸の物売りと大道芸
 日時・九月二十九日(土)  一日二回公演
 場所・深川江戸資料館

 また、歴史や時代背景を学び、或いは技術を向上させたい人のために、学習会や伝承会も行っています。
●日時 ・場所(随時)

 随時HP掲示板(ほーむぺーじけいじばん)等で通知

編集雑記
  梅雨明け宣言した途端に雨が降り出す。毎年の恒例だが、果たして今年もそうなった。とりわけ九州から西日本一帯にかけて河川氾濫や土砂崩れなどが続発し、二百人以上の死者や不明者を出した。異常気象の外高齢化等による治山治水の不備、或いは……。

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