大道芸通信 第336号

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江 戸の 三 閻 魔

『江戸名所百人一首』を見ていたら、「浅草閻魔堂」の挿絵があり右近の「忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな」の捩(もじ)り歌と挿絵が載っていた。それが左に掲げた挿絵である。「おがまるる みればおそろし 大王の 人のあくじを すくいたもふわ(拝まるる見れば恐ろし大王の人の悪事を救い給うは)」
しかし今浅草に閻魔堂はない。どうなったかとネットで調べたら,ありがたいことに すぐわかった。

 浅草橋にある牛頭天王社(現須賀神社)の北隣にあった華徳院の本尊が閻魔であったため、閻魔堂と呼ばれていたようである。今は石碑が建ち(未確認)、古地図には「エンマ」と描かれてあるとあったが、切絵図には「天王社 大円寺」の北隣へ「華徳院」とあるだけである。
それでも概ね一致したから間違いないようである。
関東大震災で被害を被ったから、杉並区松ノ木へ移り現在に至るとある。
 そうかいな。納得すると同時に外の二つが気になるのが庶民の性(さが)。ついつい気になり調べたら、下谷坂本の善養寺と内藤新宿の太宗寺とあり何れも現存のようだ。
 但し、善養寺は寺地が鉄道線路の下敷となることが決まったため、明治四十五年(一九一二)に現在地西巣鴨へ移転したが現存。本堂には高さ一丈(約三㍍)の木造閻魔が祀られるとのこと。
 内藤新宿の太宗寺は昔のままの位置にある。閻魔像は右(向かって左)に三途川婆を従え、偉そうな顔をして閻魔堂にいる。
 回文でもなきゃ早口でもない 強いていえば尻取りか それとて少々無理がある無理があっても現実じゃ 「牡丹に唐獅子竹に虎」はそんなもんじゃ それでもしまいにゃ 元へ戻る 嘘と思わん人のため 最初と最後を書いてみる。
 牡丹に唐獅子竹に虎 虎をふんまえ和藤内 内藤様は下がり藤 富士見西行後向き 剥き身蛤馬鹿柱 柱は二階と縁の下 下谷上野の山葛 桂文治は噺家で で
んでん太鼓に笙の笛 閻魔はお盆とお正月 ……大象も止まる 止まる麦わら赤蜻蛉 牡丹に唐獅子竹に虎 と繰り返す。

 これについての全文は以前本紙に書いたから重複は避ける。今回「三閻魔」を取り上げたのは、「閻魔はお盆とお正月」に注目して欲しいからである。
 ここまででピンと来る人は大道芸の通である。そう、「絵解き地獄極楽」にも出てくる地獄の釜の蓋が開く日が、お盆の十六日と正月十六日だからである。ただそれだけで他に意味はない。ないと寒いじゃ手が出ない。畑で蛤掘ってもない。
 しかし共に藪入りである。年に二回しかなかった「仕事をしないで済む日」だから、今とは比べものにならないほど皆が楽しみにしていたのが藪入りである。地獄の鬼も休んだから、釜の蓋が開いたのである。目連尊者はその隙に母親を釜から連れ出し極楽へ連れて行くことが出来たのである。
 右の挿絵は書いてある通り『群蝶画英』(英一蝶画)からである。お盆の十六日と正月の十六日に、閻魔像を抱えて各家を訪ね歩き喜捨を受けるのである。右手に持った扇は、喜捨してくれる人と直接手が触れないための小道具。

左の挿絵も『江戸名所百人一首から』築地門跡(現西本願寺)門前の風景である。元歌は坂上是則の「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
「あさぢがけ ありがたのつきぢ ごもんぜき にしの○だりの みゆるしらくも」(浅茅崖 ありがたの築地ご門跡 西の(または「虹の」)○だりの 見ゆる白雲)

門前に面(めん)桶(つう)(乞食の持つ曲物)を前に、莚を被った乞食が這いつくばっている様が描かれている。ここまでひれ伏している姿を描いたものは中々ない。はじめて見た。「おだんなさまがた やれやれたすかる」といっているが、誰に対していっているのか分からない。「よい日並みでござります」といいながら歩いている左側からのご一行だろか?それとも、右側の駕籠かきか、寺の門の前に立っている坊さんだろうか?

祐子内親王家紀伊の「音に聞く 高師(たかし)の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
 七十歳の紀伊に二十九歳のプレイボーイ・藤原俊忠が贈った恋歌「人知れぬ 思いありその 浦風に 波のよるこそ 言はまほしけれ」に対する返歌である。噂に高い高師の浜(和泉国高師浜)に、空しく寄せては返す波には かからないようにしましょう。袖が濡れて大変だから。
「かねのをと あげなばあげよ ながびくな ○せうの事も 四ツ谷天わう」(鐘の音 挙げなばあげよ 長引くな ○しょうのことも 四谷天王)
右側で見本の布(ぬの)をひらひらさせている人、その隣で反物の間から生地を見せている人、一番左で高荷を背負っている人も皆反物売りである。境内で反物市も開かれるか。

すみだ川

謡曲・隅田川で知られる梅若塚を描く。左の柳が生えている土山が墓である

大道芸の会会員募集  
「南京玉すだれ」や「がまの膏売り」など、古来から伝わる庶民の伝統文化「大道芸」を一緒に伝承ませんか。練習日は左記の通りです。

●第三三四回目  十二月十一日(水(すい))
●第三三五回目 一月十五日(水(すい))予定
時間・午後七時ー九時
場所・烏山区民センター 大広間(二階)

 また、歴史や時代背景を学び、或いは技術を向上させたい人(オンリー・ワンやナンバー・ワンを目指す人)のために、一名から学習会や特別練習も行っています。

●日時 ・場所(随時)  随時HP掲示板(ほーむぺーじけいじばん)等で通知

編集雑記
何とか今月号を出すことが出来た。今回取り上げた『江戸名所百人一首』(近藤清春作画)は、小倉百人一首をもじりながら、享保の江戸名所を紹介したものである。当時の風俗画描かれてあるので大いに参考になる。

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